【書評】『東京飛ばしの地方創生 事例で読み解くグローバル戦略』

著者 山﨑朗・久保隆行
発行 時事通信社/2016年8月刊

東京大学公共政策大学院特任教授
辻田昌弘

本原稿は、(一財)国土計画協会「人と国土21」2016年9月号に掲載されたものです。

 人口減少と地域経済の縮小に歯止めをかけるべく2014年に鳴り物入りでスタートした「地方創生(まち・ひと・しごと創生)」。現在、各地方自治体は政府の要請により策定した「地方版総合戦略」に基いて、国からの財政支援(地方創生推進交付金など)を受けつつ事業に取りかかっているところである。

 しかし、このように各自治体に短期間に一斉に計画を策定させ、その内容に即して政府が交付金を割りつけていくような政策は、ともすれば同質化・横並びに陥りやすい。例えば、現在多くの自治体が地産地消、6次産業化、地方移住、日本版CCRCといった類似した事業に取り組んでいるが、著者はこれらの施策は地方創生の補助エンジンに過ぎないとし、「グローバル戦略」こそが地方創生のメインエンジンであると主張する。人口減少に伴って縮小する国内需要にのみ依存していたのでは、産業衰退と人口減少の負のスパイラルからは逃れられないからだ。

 本書が主張する「グローバル地方創生」とは、それぞれの地域が持つ経済的・地理的ポテンシャルを活かして、地方都市は小さな世界都市に、農村はグローバル・ビレッジに、地場産業は小さな世界企業になることを目指せ、というものである。

 我が国では世界へのゲートウェイの役割を東京圏が一手に担ってきたが、グローバル化は東京圏だけの専売特許ではない。諸外国には世界に名を知られた地方都市、農村、地場産業が少なくないが、我が国の地域はグローバル化についてこれまで無自覚・無意識に過ぎた。本書のタイトルの「東京飛ばし」には、東京圏を経由せずにダイレクトに世界に打って出よ、という著者の思いが込められている。

 そうした地域のグローバル化の鍵を握るのは、これまで無駄な公共事業の代名詞とされてきた地方の空港や港湾、あるいはこれにつながる高速道路の活用であると著者は主張する。これらの物流ネットワークとグローバルな情報ネットワークであるインターネットを徹底的に使い倒すことで、地域はグローバルな物流・人流・商流を手にすることが可能になる。本書では、福岡・北海道・沖縄という特に東京から離れた国土の末端地域に焦点を当て、そこで成果を上げつつあるグローバル化への取り組みについて詳述している。

 一方、空港や港湾などのハードインフラの整備が既にほぼ完了している中で政府のなすべきことは、CIQ(税関・出入国管理・検疫)体制の強化やビザ要件の緩和、あるいは国際通商交渉など、政府の所管分野におけるソフトインフラの整備に注力することで、各地域の取り組みを後方から支援することだとする。

 以上、本書では豊富なデータと事例をベースに「グローバル地方創生」の可能性が論じられており、特に地方創生の現場におられる地方自治体職員や地場産業の経営者の方々にご一読をお勧めしたい。なにより著者のポジティブな語り口に読者はおおいに勇気づけられるに違いない。